名古屋に限らず全国的に、開店祝いの贈り物には「スタンド花」がよく使われると思います。スタンド花を飾った途端、店頭が一気に華やいで、あたりに”祝い事”の雰囲気が満ちてきます。そこに新しいお店ができたということを知らせる目印として、スタンド花は極めて重要なアイテムなのです。
そんな重要な役割を持ったスタンド花ですが、名古屋(及びその周辺地域)には独特の風習があります。全国版のテレビなどでも驚きの風習としてよく紹介されますのでもはや全国的にも有名なのかもしれませんが、名古屋では開店のスタンド花はだれでも抜いて持ち帰っていいとされています。
基本的にはお店を訪れたお客様やご近所様など今後のお付き合いが見込める方々に限って、お店の厚意によりお礼やご挨拶の意味でお花を少しずつ持ち帰っていただくと言うのが主旨だったのではないかと思います。実際には、偶然通りかかった人でも誰でもお花をもらえるというラッキーなイベントのようになっています。
そんな事情で、名古屋では開店のスタンド花は飾られて間もなく花のない状態(葉っぱと名札とスチール製の足だけ)になります。
それでも、お花を持ち帰ったラッキーな方々は周りの人たちにそのことを話しますので、本来の目的である「告知・集客効果」は、やはりあると言えるのかもしれません。
とはいえ、さすがにオープン時間よりも前に花が抜かれて葉っぱだけになってしまっては何とも残念です。こればかりは名古屋においてもご遠慮いただきたいものです。それを避けるために、花屋は名古屋特有の納品方法をするケースがあります。
花屋はオープンに間に合う時間に到着して店頭にスタンド花を設置するわけですが、「まだ開店時間前ですのでお花を持って行ってはいけません」という意味を込めてお花を裏向きにしておきます。本来スタンド花は道を通る人々に向けてアピールするわけですが、オープン前の設置時には180度反転させてお店の建物の方を向けてあり、通行人からは裏の葉っぱだけの部分しか見えない状態になっています。開店直前にお店のかたが本来の向きに直さなければいけませんので少し大変かもしれませんが、開店時間まで名古屋の風習からお花を守るための苦肉の策です。
開店ばかりではなく、周年のお祝いにもスタンド花はよく贈られます。
開店の時と同様に、抜いて持ち帰る風習がありますのでやはり定刻までは裏を向けることが多いです。飲み屋さんなどの雑居ビルの場合、2階以上のフロアでは抜かれることがまずありませんので裏を向けませんが、1階のお店は裏を向けたり見張りの専属スタッフさんをつけたりします。
ちなみに、開店・周年以外のご用途で製作・納品されたスタンド花は事情が違います。
名古屋でも、コンサートや発表会などのスタンド花を勝手に抜いて持ち帰る人は一人もいません。
プロのコンサートの場合は出演者様やスタッフの方々が持ち帰られる場合もありますし、お花が残ったまま花屋によって翌日撤去となる場合もあります。
発表会などの場合は、出演者さんや父兄、役員、先生など皆さんで分けて持ち帰られるということが多いようです。